北欧の知恵をふんだんに

IKEA Tokyo-Bayに訪問し、イケア・ジャパン株式会社の自然エネルギー利用についてお伺いして参りました。

 イケアは、“より快適な毎日を、より多くの方々に”をビジョンに運営しており、そのビジョンのとおり、再生可能エネルギー化を進め、電力については、2018年までにすでに達成しており、ガスによる空調設備もなくし、100%再生可能エネルギー化を2030年目標に掲げて推進しています。
 当初は、日本国内の電力製作であったFITも取り入れていたようだが、2014年IKEA立川を最後に自家消費型に切り替えた。変更の理由としては、FITは太陽光で発電した電気を売っているのでイケアで再生可能エネルギーを使用することができない。これらより、早くから自家消費型の太陽光発電に切り替えたと。
店舗に設置された太陽光発電での電力は、全量を自家消費してもイケア・ジャパン全体で10%ほど不足分は再生可能エネルギー由来の電力を購入し、併せて100%再生可能エネルギーの達成を進めていました。
 夏の消費電力の70%ほどが空調などの熱源システムの運転に消費しているため、電力量の平準化(デマンド電力の低減)にも向けて、夜間も空調用温熱を造成して建物内に蓄熱(躯体蓄熱)し、昼間の空調用冷温熱源に活用することで省エネ、デマンド削減、環境改善が達成されている。
 ここで注視したいことは、北欧では一般的な躯体蓄熱に向けての建物の断熱性は、日本の建築基準では、満たされていない。そこで、イケアは、日本の設計基準に捕らわれず、長年の自社経験による省エネに有効な基準を採用し、エネルギーの有効活用を図り、さらに再生可能エネルギーですべてをカバーする方法をとっており、スウェーデンでの環境に対応する経験と実績がここでも活かされていた。
 地中熱利用のヒートポンプは、IKEA福岡新宮やIKEA立川、IKEA長久手に設置されているが、運転方法は、その店舗により違いがあり、建物の熱エネルギーのベース負荷対応として長時間運転することが望ましいが、空冷式ヒートポンプと組み合わせて地中熱ヒートポンプを店舗ごとに有効活用していると伺いました。
 イケア発祥のスウェーデンでは、地中熱交換のための井戸の深さは200mほどであるが、日本では100mと浅く、これは、地質の違いが大きく影響している。スウェーデンは、数m以深が硬岩盤で、日本では100m以上も軟質堆積層で井戸が崩れやすい性質の為、施工費もかかります。
 イケアの考え方は、再生可能エネルギーの活用にコストはかかるが、再生可能エネルギーだから高くてもよいということではなく、良いものを経済的に導入(競合させ無駄を省く)という姿勢を厳しく維持し、手ごろな価格で良いものを採用する姿勢です。
 その背景には、お客様に低価格で良いものを提供するために無駄なコストはかけないという徹底した姿勢の表れとも思えました。
屋上に太陽光パネルを設置する場合のイケア社独自の安全対策についても尋ねると火災予防を最重要項目として、可燃性のポリ系断熱材を利用した屋根には設置しない。さらにメンテナンスにも厳しい点検項目を網羅した社内基準を策定し、この基準を適用して安全な設備の維持管理にあたっているという。

イケアのサステナビリティレポートにもある様に基本的な地球環境への取り組みが本質的であり、強いポリシーに基づいた徹底した目標設定と実行力において、日本の企業も学ぶべきことが多いのではないかと感じました。

今回、自然エネルギーの利活用においてお話を伺いましたが、SDGsの取り組みや地球環境保全に対する貢献などの様子もその精神性が生きていると感じました。これからも持続可能な環境保全企業として、世界をけん引していくことでしょう。

 最後にインタビューに応じて下さったイケア・ジャパンFacility Management Manager 中川 龍様、高橋 克行様に心よりお礼を述べたい。

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