講演会 最近のエネルギーと温暖化の動きと我孫子市の脱炭素転換
“最近のエネルギーと温暖化の動きと我孫子市の脱炭素転換”と言うテーマで、地球温暖化の現状と今後の脱炭素に向けた動き、その中で我孫子市の現状と対応策等についても紹介しています。我孫子市が目指すカーボンニュートラルに向けた計画の作成にも大変参考になるものと思います。講演要旨とプレゼン資料を頂きましたのでご紹介しますので、ご覧ください。尚、当日は大変暑い日でしたが、参加者は20名程でした。
講演場所 我孫子市水の館3階研修室
日時 2023年7月16日(日) 13:00~15:00
講演者 歌川 学 様
所属 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 エネルギー・環境領域 安全科学研究部門
講演要約を以下に示します。講演資料はこちら
最近のエネルギーと温暖化の動きと我孫子市の脱炭素転換
歌川学(産業技術総合研究所)
科学からみた温暖化対策
気候危機を防ぎ温暖化の悪影響を小さくするのに世界でどれくらいの排出削減が必要か。
→気温上昇1.5℃ (産業革命前から)が目安
このために世界で2030年に(2019年比)CO2を半減、2035年60%減、2050年頃実質ゼロ。厳しい削減だが、2030年対策は技術的に可能、かつ省エネ再エネではもとが取れる対策多数。
世界の対策のうごき
世界の大半の国が排出実質ゼロ目標を持つ。
世界のCO2排出総量はまだ減少傾向になっていない。
先進国で2022年に1990年比約2割減になった。英独などで40%減、日本は90年比8%減世界の再エネ発電は3割近くに拡大した。英独など約45%。日本で20%。
電気自動車普及が急拡大、ドイツ・中国で乗用車新車の3 割になった。
最近のエネルギーのうごき
・エネルギー価格高騰
化石燃料が高騰、輸入価格は石油と天然ガスは 2019 年以前の3倍、石炭は6倍になった。5月輸入価格も石油とガスが2倍、石炭が3倍である。電力や石油等の国内価格も大きく上昇した。省エネ対策の投資回収年は大きく下がり以前より有利になった。
再エネ発電コストは日本で新設の太陽光と風力は火力発電コストの5〜8 割、欧米で5分の1に低下した。消費価格と比較しても日本で自家消費太陽光は電力購入単価の半額かそれ以下の可能性。
・電力逼迫と対策
2021 年1 月に電力需給で余裕が小さくなる事態があった。2022年3月は季節外れの寒波などで東京電力管内において電力需給で余裕が小さくなる事態があった。
電力需給に余裕がないのは年間を通じて夏冬の朝と夕方のわずかな時間で、火力発電の一部は年間運転時間も限られる。前もって需要対策を行うことで需給逼迫解消効果をあげる可能性。
脱炭素対策について
・日本全体の対策
産業高温熱と船舶航空燃料には技術的課題がある。
日本全体で、(1)更新時に省エネ機械に変える、新築時に断熱建築にする、更新時に燃費の良い車 に変え将来は電気自動車にする、(2)電力を再エネ電力に、熱利用(化石燃料)は電化し再エネ電力、または再エネ熱、車は電化し再エネ電力、の手段により(つまり今の技術と改良技術の普及)2030年にエネルギーからのCO2排出量を60%削減、2050年90%以上の削減の技術的可能性がある。
日本の再エネ電力可能性は電力需要の7倍の可能性がある(環境省データ)。
対策設備投資は全体として「もと」がとれる。もとをとりにくいのは、建築の断熱改修(壁の改修。新築は投資回収)と、電気自動車などの機械の普及初期である。
・千葉県の対策
コンビナートの産業高温熱(鉄、化学など)には技術的課題があるが、省エネ再エネ普及で、2030 年にエネルギーからのCO2排出量を60%削減、2050年約90%の削減の技術的可能性がある。
県内再エネ電力は年間で消費の2倍の可能性がある(環境省データ)。この他に洋上風力がある。
千葉県の光熱費は価格高騰前で年間約2.5兆円。対策で半減可能性。設備費がかかるが、全体として光熱費削減分で「もと」がとれる。
・我孫子市の対策
我孫子市には対策の難しい所は基本的にない。
省エネ再エネ普及で、2030 年にエネルギーからのCO2排出量を60%削減、2050年90%以上の削減の技術的可能性がある。
市内の再エネ電力可能性は電力需要の約7割の可能性がある(環境省データ)。ただし 時間ごとのバランスを考える必要。将来は電気自動車のバッテリーの有効利用も可能。
我孫子市の光熱費は価格高騰前で年間約225円。対策で半分以下になる可能性。設備費がかかるが、全体として光熱費削減分で「もと」がとれる。
普及のための政策・しくみ
対策を確実に広げる、更新時の省エネ型選択や再エネの設置には、専門的知見の普及が有効。
公的なエネルギーアドバイザーが、何をしたらどれだけ排出削減できるか、費用対効果・投資回 収年はどうかなど、診断・アドバイスをする
電気屋さん、車販売店、建築相談などで省エネ商品とコスト(商品価格と10年分光熱費の合計など)の提供をうけるしくみなどなど。
まとめ
気候危機回避のため2030 年排出半減以上、2050年排出ゼロのような規模で実施。
脱炭素は対策は全体で費用対効果が高い。
脱炭素はエネルギー高騰、電力逼迫などの最近の状況の解決と両立。