地球のエネルギーバランスと自然エネルギーの利用

21世紀の最重要課題の一つにエネルギー・環境問題の解決があります。それは、化石燃料の枯渇化と化石燃料の多消費による、地球温暖化現象が深刻になるとの予測が現実味を帯びてきていることによります。

図1

地球上のエネルギー資源は、図1に示すように次の3つです。その一つは「太陽エネルギー」です。太陽エネルギーはわれわれが生きるための命綱といっても良く、圧倒的な量を誇っています。また、「地熱エネルギー」は身近にあり、温泉として気軽に利用されています。さらに、「潮汐エネルギー」は地球と月との間の引力によって生じます。現在、利用のための開発が進められています。

新聞紙上に「再エネ」の語句をしばしば見受けます。再エネとは「再生可能エネルギー」のことで、継続して尽きることなく使えるエネルギーを意味しています。「自然エネルギー」に置き換えて差し支えありません。その条件は、「入手しやすいこと」、「使いやすいこと」、「受け入れやすいこと」です

われわれが日頃恩恵を受けている太陽エネルギーには、無尽蔵で国産、クリーンであるとの長所があります。一方、短所として、変動が激しく不安定(昼夜・季節・気象変動・地域差)、エネルギー密度が低いことがあげられます。長所を伸ばし、短所を克服する新しい技術のイノーベションがさらに必要です。

表1

表1は太陽エネルギー利用技術の一覧です。太陽熱・光利用、直接・間接利用に分けられます。太陽光発電は太陽光利用で直接利用であり、風力発電は太陽熱利用の間接利用です。

各種発電のkWh当たりのCO2排出量を見てみましょう。最も排出量が多いのは石炭火力で975gです。太陽光発電は50g、風力発電は30gで、石炭火力と比較して再エネのCO2排出量が少ないことが分かります。

我孫子で期待できる再エネとして、家庭用を含めた中小規模の太陽光発電、太陽光発電と農業を組み合わせたソーラーシェアリングがあります。また、地中熱エネルギー利用が挙げられます。地下約100mの地中温度は年間を通して一定です。全国各地で、この熱エネルギーを夏季に冷房、冬季に暖房として利用されています。我孫子市での今後の展開が期待されます。 

1929年頃デンマークでの、風力発電の建設・運用から自然エネルギーを地域で共有する「コミュニテイパワー」構想が始まりました。コミュニテイパワーの3原則とは、「市民の資金」で、「市民が事業主体」となり、「市民に利益還元」することです。この原則をベースにして、各国で市民による環境・エネルギー革命の関心が高まっています。自然エネルギーは地元の重要な財産です。エネルギーの地産地消を図ることにより、お金の流れを変えて、社会システムをも変えることが出来ます。 
図2は市民によるコミュニテイを支える組織の一例です。

図2

以下に太陽光発電によるコミュニテイ街づくりについて考えます。
我孫子地域の日射量を見てみましょう。わが国の日射量(傾斜面全天)は1,200~1,650kWh/m2・年です。一方、我孫子地域のそれは、1,450kWh/m2・年で、わが国では上の部類に入り良好です。ちなみに、年間平均気温は約15℃です。

近所の個人住宅の例を写真1に示します。よく見られる住宅用太陽光発電設備です。定格容量3.8kW程度の太陽光発電設備で、2~3人家族の年間電力消費量約4,000㎾hを賄うことが可能です。ただ、これまで固定価格買取制度(再エネを用いて発電された電気を、国が定めた価格で一定期間電気事業者が買い取ることを義務付けた制度でFITともいいます)によって、余った電力を売電出来ましたが、今後は売電単価が安くなり、うま味がなくなってきたといわれています。

地産地消・自家消費型の太陽光発電設備の一例を示します。一日で太陽エネルギーが利用可能な時間帯は、日の出(6:00頃)から日の入り(18:00頃)です。この時間帯の消費電力量は1日の消費電力量の約30%と試算されます。夜間などに必要な電力は東京電力(株)などの電気事業者から買電します。そうすれば、定格容量1.5kW程度のコンパクトな太陽光発電設備で自家消費型です。図3は企業が提示しているコンパクトな太陽光発電による発電・消費の説明図です。

図3

自家消費型の小容量太陽光発電を電気的に連系して地域に広げていくことにより、新しいコミュニテイが構築可能です。居住者はそれぞれ異なった生活パターンをもち、電力の消費パターンも異なります。従って太陽光発電で発電された電力は互いに融通できて有効に利用されます。このような構想を地域連系型太陽光発電と名付け、システムの構築を電気事業法や技術的、経済的な観点から検討を行っています。別の機会に報告させて頂きます。

市民によるコミュニテイを構築するには、安価で革新的、先導的な技術が必要です。また、安心、安全など社会に受け入れられる、道徳の規範となる技術である必要もあります。今後の展開にご期待下さい。

2019年10月26日(土) 中央学院大学第53回あびこ祭で開催された 「自然エネルギーをすすめる我孫子の会」のセミナーで報告された内容をまとめたものです。

幹事長 谷 辰夫 記

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